業  種:
  • 販売

事業者名:有賀はちみつ屋

ミツバチが教えてくれるたくさんのこと

蜂蜜ってこんなに美味しいんだと、はじめて思わせてくれたのが、ここの蜂蜜でした。

そういえば蜂蜜は、どんな過程を経て出来ているのだろう?

そんなふっとした素朴な疑問から訪れたのが、ここ有賀はちみつ屋 です。

 

木々の生い茂った小高い荒神山の静かな住宅街の中、オシャレなトレーラーハウスがお店。

店内には、たくさんの種類の蜂蜜が並びます。

取材に伺い店主の有賀剛さんがテーブルに運んできてくれたのは、温かいはちみつレモン。

甘い香りの漂う中で、お話を聞かせていただきました。

「仕事中にミツバチに刺されるのは、ちゃんと仕事をしていないってことなんですよね。人間がいたずらしたり乱暴したりしない限りミツバチは刺したりはしないんです」

父親がやっていた養蜂の仕事を継ぎ、本業の合間を縫って仕事をされています。

 

「おやじの時代巣箱は、100を超えるくらいにあったんですよ。まだ私が保育園に通うまでは両親に連れられ全国をまわりました。まるでジプシー生活です。私が保育園に通うようになってから、おやじは鹿児島から青森まで一年の半分をミツバチと共に旅をしていました」

後を引き継いだのは、父親が病気をしてミツバチの世話をできなくなったから。当時は、家と店を母親に任せて家に帰ってこない父親の姿をみて、子ども心に嫌だと思ったと言う。

「ミツバチの世話は、大変だけどやってみると面白いんです。それに、ミツバチを見ていると結構可愛いんですよ。生き物を扱う仕事ですからね、難しいと言えば難しいんですが、養蜂協会の先輩たちに相談したりね。10年以上ミツバチに携わってきた先輩も、自分はまだまだ一年生だよと言っています。それだけ、奥深い仕事だと感じます」

「地域のイベントに参加したり、SNSで発信しながら美味しい蜂蜜を若い方々に 知ってもらうきっかけが多くなってきました。徐々にですが、認識してもらえてきてるって感じるんです。こうした働きかけから蜂蜜を買ってくれるお客様が増えてきた。その手ごたえが、たまらなく嬉しいんです」

 

「ミツバチが病気になって全滅したこともありました。ミツバチを飼っている場所に問題があって、刺されたと苦情が入ることもありましたね。そんなこともあって採れる蜂蜜の量も減ってしまい、外国産を取り寄せて販売することもありましたが、国産にこだわるお客様も多くあまり売れませんでした。一時は、こんな苦労の多い仕事はやめようかとも思いました」

それでもやめなかった理由はなんだったのでしょう。

「私は、この町から一度離れた人間なんです。でも、両親が作り上げてきた養蜂園を残すことで、この町との関わりを残しながらイベントなどに積極的に参加していると辰野町っていいな。この町で、まだ頑張れることがたくさんあるなって思えたんです」

それは、一度この町を離れたから見えて来た事だといいます。

これからは、安さで売れる時代ではない。品物の良さだけでも売れない。

これからは、人と人との繋がりで売る時代だと感じています。

“この人から買いたい”と思ってもらえる売り方が、これからの時代に合っているという。

 

「お客様に蜂蜜を舐めてもらって、蜂蜜が出来るまでの話なんかをしてみる。一匹のミツバチが運んでくる蜜は、ほんのわずかです。でも、あれだけ多くのミツバチがいるので、たくさんの蜂蜜が採れるんです」

外敵も多い中でミツバチは、一生懸命蜜を運んでくる。

夜は、採ってきた蜂蜜を濃縮させるために羽で煽って水分を飛ばします。

すると濃縮された蜂蜜が採れるんです。

ミツバチがそんな風に頑張って採れたものが、この蜂蜜です。

そんな話をお客様にするそうです。

「すると、あるお客様は、尊いねぇ、尊いねぇって言ってくれるんです。そんな話を聞いてから最後の最後まできれいに食べるようになった。食を大切にするようになったとか言ってくれるんです」

「これまでずっと、利便性が追及されてた時代でした。こうしたコミュニケーションから食を大事にする気持ちが芽生えてくるんです。かつての市場などで見られた売り手とのコミュニケーションが失われてきました。 今の時代、またこうしたコミュニケーションありきの販売が求められているのではないでしょうか」

蜂蜜を通してのお客様とのコミュニケーションが、食べ物への感謝につながっていくのを感じるという。

「ときどきお客様に、どの蜂蜜がいいですか?とか聞かれるんです。みんなそれぞれに良いものなので、どう答えればよいか困ってしまうんですよね」

 

はちみつの種類

【アカシア蜂蜜】

人気の高いアカシアの蜂蜜はさらっとしてて癖がなくて色もきれい。

1番人気の蜂蜜です。ほのかな香りでクセもなくまろやか。

そのままでもお料理や飲み物などに幅広く使っていただけます。

 

【百花蜜(ひゃっかみつ)】

数種類の花の蜜が含まれています。

色身も濃くて風味豊かな蜂蜜です。

単花蜜として販売できない物を百花蜜として販売させていただいております。

蜜が採れる時期により、そばの蜜が混ざっている蜜もあります。

 

【オリジナルブレンド蜂蜜】

透明色であっさりとした味のアカシア蜂蜜と、琥珀色で蜂蜜の香りが高いトチ蜂蜜をブレンドして作ったオリジナルの蜂蜜は、口当たりがよく、大変お客様に好評を得ています。

 

「私は、少し癖のある百花蜜が好きだったりします。でも、みんなそれぞれに美味しい。どれもみんな、ちいさなミツバチたちが健気に一生懸命とってきたハチミツです」

 

「巣箱の中の様子をうかがう時、こうして煙を吹き付けます。するとミツバチが大人しくなって作業がしやすくなるんです。最初は刺されるからと手袋をして作業をしていたんですが、細かい作業がしにくいんですね。それで素手で作業するようにしたんです。時々ミツバチが手に乗ってきたりして可愛いんですよ」

有賀さんのミツバチに対する愛情がひしひしと伝わってきます。

「巣箱には、いろんな工夫がされています。下の写真の仕掛けは、ミツバチを襲いに来るスズメ蜂を捕獲するものなんです。カゴの中には格子があります。ミツバチには出入りできますが、スズメ蜂はいったん入ってしまうと出られない仕組みになっているんです」

ひとつひとつの道具や巣箱の中を見せてくれながら丁寧に仕事の行程を教えてくれます。

巣箱は、数か所に分けて配置します。土日の早朝などに巣箱の様子を覗きに行きます。標高の低いところから高い方へ巣箱を置くと、気温の変化や季節に応じてたくさん採蜜できるのだそうです。

 

「94歳で蜂を飼っている方もいます。腰が痛いと言いながらも、『ミツバチと一緒にいられることが幸せなんだよ』とニコニコしながら話をするんですよ」

ミツバチを飼っている人は高齢者が多く、後継者がなかなか育ちません。

「巣箱は常に平らなところに置ける訳ではなく、斜面などに置くことも多いんです。そんな足場の悪いなか、中腰の姿勢で20キロはある蜜箱を運ぶので、高齢者にはキツイ仕事です。 そんな訳で、歳を取るにつれて蜜箱は減らしていかないと対応できない。そうするとミツバチの数は、どうしても減ってきてしまうんです」

ミツバチは農作物の花の受粉を助けたりする役割となっているため、ミツバチの減少は深刻な影響をもたらします。

 

また、蜜源に関する問題もあるという。

「アカシアの蜂蜜は人気がありますが、アカシアの木は、外来種であることを理由にほとんどが伐採されてしまったんです。国立公園内であるなら外来種であることで伐採されるのも理解できます。外来植物を街路樹に植えられている中で外来種を理由に伐採されてしまうのはおかしな事です」

死活問題だからと行政に陳情したこともあるそうです。

巣の中で行われていることも大変に興味深いという。

ミツバチの仕事は、ずっと同じことを繰り返しているではなく生まれたての時は巣の中の仕事をします。
巣の掃除をしたり 、女王蜂にローヤルゼリーを与えたりします。

「メスの働き蜂は、ある程度大きくなると外に出るようになって採蜜をします。働かない針もなく大きいだけの オス蜂は、子孫を残すため女王蜂と交尾するための蜂なんです。役目を終えたオス蜂は、季節が冬になると厄介者として外に追い出されてしまうんです」

この写真の中央に見えるのが女王蜂です。

 

ミツバチは、蜜の採れる場所をちゃんと理解していて、それを仲間たちに伝えます。 テレビなどでも、よく紹介されている8の字ダンスがそうです。

半径2キロを飛んで行き、ちゃんと自分の居た巣箱に迷わず帰って来ます。

あんな小さい体の中に、そんな能力があるなんてほんとにすごいなって思いました。ミツバチに限らずですが、生物たちの営みを知ると本当に奥深いです。

 

「以前に、巣箱を熊に襲われたことがありました。熊の行動の痕跡を追うと非常に賢いんです。むやみに食い散らかすようなことはせず必要な分だけ頂きます」

自然界の生き物は、必要な分だけを自分の力で得て生活をしている。

人間の社会は、いろんな物を持ちすぎていると有賀さんはいいます。

「自然界って、誰が偉いとかじゃなくて共存しているんですよね。ミツバチは、私に様々なことを教えてくれる存在なんです。必要なものは自分たちで考えて生産するという営みの中でなら、人はもっと心を豊かにして生きていけるんじゃ ないかって思います。物がありすぎると疲れちゃうんですよね。ないならないで生きていけると思うんです」

 

ミツバチを通して見えてくる様々な世界があります。

養蜂の仕事は、ほんとうに奥深く、興味深い仕事です。

後継者がいない。

それによりミツバチの絶対数が減少している。

蜜源が失われてゆく。

こうした現状を知り、新しい切り口で養蜂の仕事をやりたいと思ってくれる人が現れてくれると嬉しいと、有賀さんは話してくれました。

  • 会社情報
  • 会社情報
    事業者名有賀はちみつ屋
    所在地〒399-0424 長野県上伊那郡辰野町赤羽304-4
    電話番号0266-41-1055
    FAX0266-41-1055
    E-mailpan55@inacatv.ne.jp
    設立年月日昭和30年
    全従業員数1名
    主な業種その他
    事業内容蜜蜂飼育・蜂蜜販売
会社情報
事業者名有賀はちみつ屋
所在地〒399-0424 長野県上伊那郡辰野町赤羽304-4
電話番号0266-41-1055
FAX0266-41-1055
E-mailpan55@inacatv.ne.jp
設立年月日昭和30年
全従業員数1名
主な業種その他
事業内容蜜蜂飼育・蜂蜜販売
応募・お問い合わせはこちら

関連する記事