業  種:
  • 宿泊
  •  / 
  • 農業・林業

事業者名:なないろ畑株式会社

里山を伝える「古民家」の            自然を生かしたおもてなし

 

2021年6月に開業した辰野町小野地区にある「古民家民宿なないろ」。築170年ほどの古民家は、雰囲気を残しながら綺麗にリフォームされています。

 

「都会では味わえないフレッシュな空気と、里山の景色、そして自家栽培の野菜を使った料理を用意して、宿泊者をお待ちしています。」と話すのは、鎌仲ひとみさん、岩田まき子さん、飯田礼子さん。3人とも首都圏からの移住者ですが、小野地区の自然に魅了されて「古民家民宿なないろ」を運営しています。

 

豊かな自然と、豊かな時間が宿泊者をもてなす「古民家民宿なないろ」について伺いました。

 

 

 

■自然を生かした古民家や料理、よそおい

 

「なないろ」という看板が掲げられた古民家に足を踏み入れると、里山が見える縁側が付いた大広間。その奥には襖で仕切られた3つの座敷、キッチン、お風呂などが、贅沢にも1組限定で貸し出されています。

 

「居心地よく過ごしていただきたくて、お掃除はすごく丁寧に磨き上げています」と鎌仲さん。18畳の大広間に敷かれた長野県産材の赤松のフローリングは、綺麗に磨き上げられています。大広間は天井も高く、その高さに驚く方も多いのだそう。薪ストーブも設置されて冬を彩ります。

 

 

庭に咲いている花を束ねて、古民家に飾るのは飯田さん。自然の彩りのあしらいは、宿泊者から好評なのだそう。

 

要望があれば、夕食は宿泊者と一緒に用意。地元で採れる旬の素材が使われたコースをつくります。前菜が2つ、メイン、天ぷら、10割手打ちそば、デザートまで作りたてをいただきます。

 

「宿泊者に合わせたメニューを相談しながら作るんですよ。手に入る素材などを考慮した、季節に合わせたメニューです。」と飯田さん。

 

料理に使われる米や野菜たちは、岩田さんが手をかけています。「農薬や肥料が使われずに育つ野菜たちばかり。玉ねぎやトマトは小玉ながら、味が濃くておいしいんです。」と岩田さん。野菜の生命力を生かしたからこそ味わえる味わいが自慢です。自家製トマトを使ったオリジナルケチャップは商品化となりました。さらにお肉も信州産、手に入れば鹿肉も並びます。

 

予約は、Facebookの問い合わせとAirbnbから。Airbnbからは、世界中から予約が入ります。食事ありの場合には、Airbnb ではなくFacebookの問い合わせからの予約が必要です。

 

 

岩田さんは「里山の環境は空気に混ざり物がないんですから、空気が綺麗ですよね。それを味わえるのも醍醐味です。」と話します。

 

宿泊する方からは、「熟睡できた」「こんなに深く寝れたのは久しぶりだ」という声がよく聞かれるそうです。

 

「あんまり格式ばらないでね、自分の実家に遊びに来たような空間を、楽しんでもらいたいですね。都会の騒音もなく、鳥のさえずり、川の音、虫の音が響く空間。自然の音しかないから、そういうのはすごく心地いいんじゃないかな。」と鎌仲さん。

 

おしゃべり好きの看板猫サクラも宿泊者を出迎えます。

 

 

 

■古民家再生を目指して「チームなないろ」結成

 

3人とも、首都圏から辰野町への移住者です。さらに共通点は「農業生産法人なないろ畑」に関わっていること。農業生産法人なないろ畑(以下:なないろ畑)は神奈川県大和市にある農業法人で、辰野町にも田畑を所有するほか「古民家民宿なないろ」の古民家も所有します。

 

鎌仲ひとみさんと岩田まき子さんは、2018年の秋に初めて辰野町に訪れました。鎌仲さんは「ぶんぶんフィルムズ」の代表として、社会派ドキュメンタリーを制作する映画監督。岩田さんは映画制作パートナーでカメラマンです。

 

かねてより地方移住を考えており、辰野町沢底地区にあるオーナー制度で貸し出されていた田んぼで農作業をしていました。辰野町の里山や農業の魅力に惹かれて、東京から通いながら自然栽培の田んぼを育てました。飯田さんは古民家を管理する女将として、鎌仲さんと岩田さんより前から辰野町へ移住していました。

3人で古民家の周囲を耕して作物を育てるうちに、「ぶんぶんフィルムズ」の活動としても、映画と農業を掛け合わせていきました。ついに辰野への移転を見据えて、東京の会社をだんだんと縮小。そのなかでコロナ禍へ突入しますが、それが完全なる移住の転機となりました。

 

「いろんなタイミングが重なって、流れに乗りました。」と鎌仲さん。

 

 

しかし2020年に古民家の売却案が浮上します。晴天の霹靂のごとく、なないろ畑の代表が亡くなったことがきっかけでした。一般的に古民家は管理費や光熱費費など維持費が重くのしかかるもの。代表が亡くなったことで課題がさらに浮き彫りとなりました。

 

「私たちは古民家が大好きなので、なんとかして売却しなくていい方法を考えました。この古民家を生かしながら維持費を捻出したいと、民宿開業へと動き出したのです。」

 

鎌仲さん、岩田さん、飯田さんの3人で「チームなないろ」を結成。そこから「古民家民宿なないろ」開業へと道が拓きます。

 

 

■想いが集まったクラウドファンディング

 

古民家のリフォーム費用、耕作放棄地であった古民家所有の農地を再生するための資金を得るため、2021年3月1日からクラウドファンディングをスタート。クラウドファンディングでは300人近くが応援しました。

 

1カ月半で目標金額を達成。薪ストーブを入れて、大広間と玄関の上がり框にフローリングを貼り、畳を入れ替えました。薪ストーブ背後に耐火レンガを積んだり壁を塗ったりなど、できることは自分たちで。こうして多くの方の愛情がこもった民宿が出来上がったのです。

 

 

大広間はイベントスペースとしても使われます。音楽ライブや福島県からの避難者が語り部となるトークイベント、そして暦と合わせて食養を学ぶ「土用塾」などが開催されています。

 

時には、移住を考えている方が泊まりにくることもあるのだそう。滞在を通して辰野町を感じた後、実際に移住を決断した方もいらっしゃるそうです。

 

「里山は居心地がいい。木々の葉っぱがもりもりと元気で落ち着きます。水も綺麗で、お米も取れるから酒蔵もあって豊かですよね。」と岩田さん。

 

「秋は落葉樹で彩りがあって、冬は寒々とした澄んだ空気がきらきらとしていて綺麗。標高830メートルの独特のこの空気感がいいですね。」と飯田さん。

 

「歴史もあるし、住んでいる人たちもそれぞれ味のある人たちでね。楽しいよね。」と鎌仲さん。

 

 

 

■自然のドキュメンタリー

 

辰野町に住むことで里山の魅力を感じられる一方で、耕作放棄地や、管理が行き届いていない里山の課題も見えてきました。そんな課題に迫るのが映画監督としての役割です。

 

現在は、辰野町で里山再生活動をする「にれ沢蝶の森」のプロジェクトに参加しながら撮影をしています。

 

「実は、日本の自然は危機的な状況となっています。現在は生物多様性を維持したいと湿地を再生しています。湿地がどんどん日本中から減っていて、渡り鳥が来られなくなっていたり、目に見えないところで生物が知らぬ間に絶滅していたり、問題が日本中で起きています。」と鎌仲さん。

 

そんななか、誰かがカリスマ的に指導するのではなく、試行錯誤しながら、みんなで手を入れていくのが「にれ沢蝶の森」。活動する姿を撮影しています。

 

「東京にいたらこんな視点は持てなかったかもしれません。今では、木を1本切るのにも、いろいろ考えさせられます。その木によって生かされていた虫、木の芽がどれだけ水脈を耕しているのか。みんなつながっているので、全体のバランスを考えると、簡単には切れませんね。」

 

自分達が住んでいる自然環境を守る為にも、自然を見守り、自然を生かしながら管理をしていきます。そして、自然の現状を知ってもらうために、活動を広めていく使命があります。

 

 

■豊かな環境で描く、古民家民宿の今後

 

「もっと皆さんに泊まってほしいですね。この空間を味わいに来てもらいたいです。」と鎌仲さん。

 

コロナ禍に開業したため、クラウドファンディングの支援者やなないろの会員、映画のファンの方々には開業を伝えられていたものの、広く宣伝もできていませんでした。

 

「ただただ、のんびりしに来てほしい。ワーケーションの場にするという話もあったんだけど、あんまりマッチしないよね。ここに来ると、ぼーっとして過ごすのがいちばん。お茶を飲んでいるだけで癒されますね。」

 

窓も大きく、自然の中にいることを実感できる古民家。仕事のことを忘れて、リフレッシュできそうです。民宿で味わえるのは、都会ではお金を出しても叶えられない体験。豊かな里山が、宿泊者を待っています。

 

 

 

  • 会社情報
会社情報
事業者名なないろ畑株式会社
所在地〒399-0601 長野県上伊那郡辰野町小野1033
電話番号080-6595-4367
E-mail888kamanaka@gmail.com
URLhttps://www.facebook.com/kamananairo(古民家民宿なないろ) http://nanairobatake.com/(なないろ畑株式会社)
資本金1,000万円
代表者名畑中達夫
全従業員数3人(内、男性 2人、 女性 1人)
主な業種農業生産
事業内容農業生産事業
販売事業
民宿経営
応募・お問い合わせはこちら

関連する記事