素材の香りを最大限に引き出す蕎麦屋

伊北ICの北側、国道153号に面した蕎麦屋の「そば処 素香庵（すこうあん）」。カジュアルな佇まいの店舗は、国道に向いた窓が大きく開放的で、庭にはペットと利用できるテラスがあります。

「素材本来のおいしさを最大限に引き出すことをモットーに、香り高い蕎麦を提供していきたいです。」と話すのは、店主の水上さん。脱サラ後、素香庵を開業してから10年が経ちました。「素香庵」という店名は、「素材を活かす」という意味が込められています。

開業までの経緯や、人気メニュー、料理のこだわりなどを伺いました。

◾︎脱サラして、心機一転。蕎麦屋をオープン

水上さんは、かつては製造業に従事。料理は趣味で楽しんでいました。転機となったのは、蕎麦好きの知り合いがふるまってくれた蕎麦。「蕎麦はこんなにおいしいものなのか」と、そのおいしさに衝撃を受けたそうです。

すっかり蕎麦にハマった水上さんは、全国各地の蕎麦屋を食べ歩くようになりました。北は北海道から南は島根まで、300軒近い店を訪れ、蕎麦の奥深さを体感。

「私も心のどこかで、おいしい蕎麦を提供する店を開きたいと思うようになりました。」

2014年、諏訪地方で自身の蕎麦屋をオープン。メニューなども考案し、理想の蕎麦を追求し続けてきました。そして2019年、現在の国道沿いの店舗に移転。店の裏には畑があり、採れたての新鮮な野菜は、料理に使われています。

◾︎地元の味覚を織り交ぜた個性派蕎麦メニュー

人気メニューは、大盛りの「2倍ざるそば」。土日祝1050円、平日850円で食べられます。そのほか煮干しの風味が効いた「煮干しつけそば」や、鶏とネギを香ばしく焼いた「鳥ネギつけそば」など、多彩なメニューが並びます。

「辰野の川島地域の殻つきの玄蕎麦を仕入れています。香りや甘みを感じられる蕎麦だと思いますね。また、地産の味覚、旬の味覚を仕入れて提供することを心がけています。」

店の裏の畑で採れる野菜を使った天ぷらがセットにつく「野菜天ざる」も人気メニュー。お通しには、冬は畑で取れた「野沢菜の漬物」、そして夏は庭にある木から採れた「梅の甘煮」や「梅干し」が提供されています。

お客さまは、平日はサラリーマン、休日は観光客が多いとのこと。南信地方の名物である「ソースカツ丼」や、地域の味噌を使った「みそカツ丼」は、特に観光客に喜ばれます。観光客には愛犬を連れている方も多く、一緒に来店できるテラスも用意しました。

「わんちゃんとの時間や、長野の風を楽しんでいただきながら、長野名物を味わっていただけます。」

蕎麦をデザートでも楽しめる「自家製のプリン」も、ぜひ試してほしいメニューです。

◾︎目標は「蕎麦のように、細く長く続けていくこと」

運営で心がけているのは、必要なものを、必要な時に、必要な量を生産することで、効率化を求める「ジャストインタイム」の生産方法。もともと製造業で働いていた仕事の考え方を活かしています。

「蕎麦は、毎日製粉して、製麺は注文を受けてからおこなっています。お客さんに喜んでいただけるように、お手頃価格かつおいしいものを提供するためです。やはり、出来立てはおいしいですから。そして五感と、経験からなる第六感を使って、味を決めています。」

目標は、「蕎麦のように、細く長く続けていくこと」。日々の積み重ねを大事にして運営を続けることです。

「いちばん大切なのは、お客さんに喜んでもらうことです。高望みをすればリスクが増えますが、現状維持しつつ、少しずつクオリティを上げて着実に進んでいくのが理想です。

ほぼ毎日通っていただいているお客さまもいますので、お手頃価格でおいしいそばを日常食として楽しんでもらえれば嬉しいですね。観光客の方には、地元の素材を味わっていただきたいですし、サラリーマンの方には、満足いただける量の蕎麦を糧に午後の仕事を頑張ってもらいたいです。」

安心安全で、素材を活かした食事を提供することが、素香庵の使命。「おいしいものを食べていってもらいたい」という気持ちをもとに、守り続けたい味があります。