「試行錯誤を通して熱中できる。」　　　　　　　　　　　　　　光学レンズ製造

光学機械用レンズの製造をおこなう「有限会社クレスター光学」。40年を超えて辰野町で事業を展開しています。「納期通りに高品質の製品を安定供給する。当たり前のことかもしれませんが、お客様のご期待にお応えしたいですね。」と話すのは、代表取締役の関根 敏史さんです。

光の屈折や反射などを利用した精密機械がつくられるのは「光学」と言われる産業。そのなかで用いられる、レンズ・プリズムを担う企業の、技術や思いなどについてお伺いしました。

■ ノウハウをもとに、新しい磨きにも挑戦

貴社の歴史や、生産品を教えてください。

〈関根社長〉
「辰野町は光学が盛んな地域です。地域の光学を支えるような仕事をしたいと、叔父と共同創業者によって、1980年、当社が辰野町で設立されました。私は25年ほど前に就職し、2006年に代表を継いでいます。

創業当初からおこなうのは、光学レンズ研磨です。完成品は、カメラや顕微鏡、双眼鏡、機械装置、監視カメラ、プロジェクター、ライフルなど。幅広い製品のレンズ研磨を担当しています。現在は、プロジェクターやライフルのシェアが大きいですね。

お客様は他県にもおられますが、県内の企業様がメインです。20年を超える長いお付き合いのお客様もいらっしゃいますね。」

対応するレンズや、技術について教えてください。

〈関根社長〉
「直径は6mmから60mmまで幅広く、さまざまなガラスの種類を加工しています。ガラスの種類は多岐にわたるので、一つずつ異なる方法で対応する必要があります。

例えば、形状が半球に近いカーブ（Rが小さい）や、中心の厚さが厚くなると難易度が上がりますね。機械では加工できないようなところは手仕事が増えますし、修正もあります。ガラスの種類によっても難易度は変わってきます。」

〈関根社長〉
「スタッフは5人。レンズの表面を滑らかにする『砂かけ』と、傷・荒れを除去する『研磨』、レーザーを当てて反射で精度を測る『検査』を手分けして進めます。さまざまなレンズ加工があるので、1日ごとに異なる作業となりますので、だんだんと幅広い経験やノウハウが蓄積されていく意識でおこなっていきます。レンズ研磨の技術は簡単に身に付くものではありませんので、何年もかけて獲得していくものです。

お客様から仕事をもらう際は、一般的には試作品のできあがりが認められた場合となります。研磨剤を選定して、要求された品質に合わせて研磨をおこないます。ご評価いただけたら量産仕事へと移ることができますので、やったことがない仕事でも果敢に挑戦していきます。『ああでもない、こうでもない』と試行錯誤して熱中できるのも楽しいですね。

ガラスメーカーさんにより、新しいガラス素材が常に開発されています。お客様から新素材の注文があれば、それに合わせて磨き方や対応方法を変えていくことが必要ですので、立ち止まることはできません。これまでの事例をふまえながら、効率の良い磨きを追求します。」

■ こまめなチェックで、お客様のご要望に応える。

製造において、心がけていることはありますか？

〈関根社長〉
「心がけているのは、こまめにチェックをすることです。昔は量をガンガン作る生産が求められましたが、現在は量よりも高い品質が求められます。時代と共に技術が進歩するなかで、レンズの形状や厚さ、寸法、歪みなどの要求も厳しくなりました。

工程ごとに抜き取りチェックをおこなうことで、ミスをミスのままで進んでいくことを防ぎます。後でやり直して取り返すのは、大変ですからね。毎日まったく同じのコピー品ができるわけではありません。時にはトラブルが起こることもありますが、調整しながら生産しています。」

今後の展望はありますでしょうか？

〈関根社長〉
「私が辰野町に最初に訪れた際、辰野町は光学産業が多い地域とは知りませんでした。しかし、だんだんと同業他社さんと交流するうちに実感できるようになりましたね。同業他社さんと互いに生産協力や情報交換をしながら、町全体で技術や品質の維持・発展に努めていきたいです。

そして、当たり前のことかもしれませんが、お客様からの要望に応える品質を、安定供給できるように努めていきます。いただく仕事は、私たちへの信頼の証。これからも一つずつ丁寧に対応していく気持ちを持っていきたいですね。」