- 業 種:
- ものづくり
事業者名:有限会社 林レンズ
日本の技術革新に貢献。 研究開発に求められるレンズ研磨企業
大手メーカーや大学研究機関の研究・開発に必要な「レンズの試作・開発」を専門とする「有限会社 林レンズ」。0.3mmの内視鏡レンズから、国が推進するプロジェクト『大型低温重力波望遠鏡KAGRA』や『潜水調査艇の観測窓』まで、幅広いレンズ製作を担当しています。
「最先端の研究・開発にかかわれるのは光栄なこと。難しい形のレンズや、ナノオーダーの高精度が求められるレンズ、そして当社の強みである結晶レンズなどを製作しています。今後は、ダイアモンドの次に硬いと言われるサファイアレンズ加工の需要にも応えていきます。」と話すのは代表取締役の林喜正さん。
これまでに携わった開発研究プロジェクトや、技術の強み、これから貢献できる加工技術などを伺いました。
■ 突き詰めてもゴールが見えない世界
生産品について教えてください。
〈林社長〉
「当社は、レンズの試作・開発が専門。大手メーカーや大学研究機関の開発チームからご依頼があって、研究・開発の一部に用いられるレンズ製作に携わります。まれにレンズにこだわる個人からのご依頼もありますね。どれも量産するものではなく、1つずつに合わせた加工がメインです。
これまでのご依頼の例を挙げると、曲面ではありながらも機械測定できないほど平面に近い(Rが大きい)レンズ加工や、各種結晶レンズの加工、医療用内視鏡に使われる0.3mmもの小さいレンズ加工、そして測定器の基準となるマスターレンズ作製などがありました。
最近増えているのは、工業用の光学レンズ。半導体装置のレーザーを出すためのレンズです。特定波長がありますので、その必要波長に合わせたレンズを作製します。
研究・開発製品のため、内容やお取引先などは機密情報になるため具体的に公表できないのですが、どれも最先端の研究・開発に使われるレンズなので、難易度が高いものばかりです。」
特に印象的だった研究・開発事例を教えてください。
〈林社長〉
「国の大型プロジェクトは印象的でした。ひとつは『大型低温重力波望遠鏡KAGRA』の測定装置に入るレンズを担当しました。KAGRAがとらえるのは、ブラックホールの合体などで生じる、時空のゆがみ『重力波』。重力は、宇宙の構造や進化を支配するとても重要な力で、その重力波を観測できるようになることは、宇宙の謎を知るために非常に重要です。
装置は地下約200メートルに掘られた計約6kmを超えるL字形のトンネルのような形。両端へレーザーを同時に出力して、反射を測定します。時空がゆがむと、光の到着に一瞬のズレが起きるのですが、作製したレンズはそのズレを測定する装置の一部となります。2023年から再度観測をスタートするとのことで、これからの研究が楽しみですね。
もうひとつが、深海に潜ることができる有人潜水調査艇の『観測用窓』です。深海になると、1㎠あたり約680kgfもの水圧がかかるので、安全に作業を行うには、高い水圧に耐えられる強い調査船が必要です。観測窓も同じく強度があるもので、かつ水圧を均一に分散できるような高精度な半球にしなくてはなりません。数センチという厚いガラス材料で半球形状を作るのも難しいのですが、ノウハウを集結させました。」
さまざまな研究開発に携わっているのですね。
〈林社長〉
「開発にかかわれるのは光栄なこと。そして経験値も上がるので面白いですね。数年後にニュースを見た時、『あの案件は、このためだったのか』と分かるような事例もあります。実は4G回線が出てきた頃には、すでに5Gの研究に携わっていました。その頃は何のことだかあまり分かっていませんでしたね。
技術革新が世界全体で進めば、それに対応できるレンズが必要となり、求められる技術も高まっていきます。突き詰めてもゴールが見えない世界で、職人としてのこだわりを込められるので、とてもやりがいがあります。」
■ 蛍石の結晶加工を強みに
貴社の強みについて教えてください。
〈林社長〉
「一般的にレンズに使われるのはガラスですが、当社の強みは『結晶研磨』。そして主力は、フッ化物のひとつである『蛍石(ほたるいし・フローライト・フッ化カルシウム・CaF2)』の加工です。
レンズは、光を通すと色が分かれてしまう色収差という現象が起きるのですが、蛍石は色収差が極めて少ないといわれる、数少ない素材です。そして透過率や屈折率の波長分散が極めて小さく、透過波長領域が広い特徴があるので、高級な光学機器、例えば、カメラや顕微鏡、望遠鏡、半導体ステッパーなどに使われます。」
〈林社長〉
「蛍石はとても優れた素材なのですが、研磨できる職人が少ないのが現状です。結晶には特定方向に割れやすい『へき開』という特徴があるので、研磨しにくく、精度が出にくいのです。加工時間がかかるうえに、材料が高いために失敗したときの損失が大きいので、手を出す職人がいないのも原因でしょう。
当社は、ドイツ発祥で20世紀初期に開発されたと言われる『オスカー式研磨機』を使って、『ピッチ研磨』しています。最先端のことを行う割には、古い機材を使うのですが、このシンプルな研磨方法だからこそ、職人としての感覚が蛍石に伝わって、高い精度へと現れるのだと思います。」
■ 新しい素材に挑戦。今後はサファイアレンズも
貴社の歴史、林さんの経歴を教えてください。
〈林社長〉
「当社は1983年に父が創業し、当時から量産ではなくレンズの試作・開発を専門としています。私は2022年12月に代表へと就任しました。
私がこの道に入るまでは、水産研究者や、歯科技工士として仕事をしてきました。2つとも異なる職種ですが、実は今の仕事に役立っていることがあります。
水産研究では、生物が生きていくための水の管理が大切なのですが、実はレンズ研磨でも研磨液の水質管理が重要です。水の管理における知識があったからこそ可能だった案件もありました。
そして歯科技工では、歯の被せ物や、歯の詰め物などを作製していましたが、こちらの技術と知識は今に活きています。人間は髪の毛1本噛んでも分かってしまうくらい感覚が繊細なので、その違和感をなくすためには、歯科技工物の磨きの技術が必要なのです。同じ「研磨」でも歯科技工では金属やセラミックの研磨なのですが、それらの知識がうまい具合に融合しましたよね。」
今後の展望を教えてください。
〈林社長〉
「どんな仕事がきても断らない会社でありたいとは思っています。『こんな磨きはできますか』というお問合せに対して、『できるよ』と応えてしまえば失敗はできません。ご依頼を受けるということは、とても覚悟が必要なことです。経験を積んで『できるよ』と常に言える状態でありたいですね。
最近、ご依頼を受けられる状態までに精度を高められたのが『サファイアレンズ』です。今まで、高精度の磨きが世に出ていなかった素材ではないでしょうか?
サファイアは、ダイアモンドの次に硬い素材ですので、サファイアを磨くのに必要なのは、ダイアモンド。そのため、もし研磨でサファイアに傷がついた場合、それを消すことってなかなか難しいんですね。また、サファイアが硬すぎてとにかく研磨にならないことが多いんです。何年もかかって、やっとそれらを克服し、均一に加工することが可能となりました。
世の中には、たくさんの材料がありますので、まだ触ったことのない材料もあります。そして常に新しい材料が開発されていますので、1つの素材加工が可能となっても、また新しい材料が生まれていきます。立ち止まることはせずに、今後も新しいことに挑戦していきたいですね。」
- 会社情報
会社情報 事業者名 有限会社 林レンズ 所在地 〒399-0422 長野県上伊那郡辰野町平出平田1902-2 電話番号 0266-41-4080 FAX 0266-41-4878 E-mail info@hlens.jp URL https://hlens.jp/ 設立年月日 1983年 4月 1日 資本金 3000000円 代表者名 代表取締役 林 喜正 全従業員数 4人(内、男性 2人、 女性 2人) 主な業種 製造業 事業内容 光学レンズの試作・製造
各種結晶研磨会社PR 光学レンズの試作を中心として少数、小ロットの製造を行っています。光学レンズの中でも高精度を求められるレンズや難硝材と言われる加工の難しい材料のレンズ加工を得意とし、特に結晶系レンズの製作には多くの実績があります。CaF2レンズ(フローライト/蛍石)は主力製品として製作しています。
- 会社情報
事業者名 有限会社 林レンズ 所在地 〒399-0422 長野県上伊那郡辰野町平出平田1902-2 電話番号 0266-41-4080 FAX 0266-41-4878 E-mail info@hlens.jp URL https://hlens.jp/ 設立年月日 1983年 4月 1日 資本金 3000000円 代表者名 代表取締役 林 喜正 全従業員数 4人(内、男性 2人、 女性 2人) 主な業種 製造業 事業内容 光学レンズの試作・製造
各種結晶研磨会社PR 光学レンズの試作を中心として少数、小ロットの製造を行っています。光学レンズの中でも高精度を求められるレンズや難硝材と言われる加工の難しい材料のレンズ加工を得意とし、特に結晶系レンズの製作には多くの実績があります。CaF2レンズ(フローライト/蛍石)は主力製品として製作しています。