業  種:
  • ものづくり

事業者名:有限会社 アイテック

金型設計から製造まで                 プラスチックをかたどるメーカー

 

金属部品とは異なる場面で使われる“プラスチック部品”。軽くて強い、電気絶縁性に優れる、錆びたり腐ったりしないなどの特徴があり、車や医療機器、住宅設備、配管など、さまざまな設備に搭載されています。

 

プラスチック部品は、高温の樹脂を金型に流し込んで、それを冷やして固めることで出来上がります。一般的なプラスチック部品の製造において『プラスチック部品を設計する設備メーカー』と『金型を使って実際に部品を大量生産する工場』、『部品を作るための“金型“を製造する金型メーカー』が連携していますが、今回お話を伺った有限会社アイテックは、3つ目の『部品を作るための“金型“を製造する金型メーカー』にあたります。有限会社アイテックは金型の設計から、その金型の製造まで一貫しておこなえる企業です。

 

「この地域では珍しい会社かもしれません」と教えてくれたのは代表取締役社長の熊谷 志郎さん。金型はすべて一点もので、お客様の要望に合わせてつくれるように、日々奮闘しています。金型がつくられる流れや、アフターフォロー、これからの展望などについてお伺いしました。

 

 

 

■プラスチック用の金型の設計から製造まで

 

1993年に会社を設立した有限会社アイテック。その2年前に前社長の熊谷久司さんが1991年に個人事業として設計事務所を立ち上げたのが始まりです。2025年1月からは志郎さんが後継しています。

 

お客様となるメーカーは幅広い分野にわたりますが、割合としては自動車関連が半分以上を占めています。自動車では、外から見える部品のほか、機構部品(複数の部品が連動して動作する部品)を担当します。自動車以外では、水回りや床暖房などの住宅設備関連や、医療機器関連などの部品を手掛けます。

 

お客様は日本全国にいますが、8割は長野県内、残り2割は中京圏が中心。特に自動車関連のご依頼が多い状況です。

 

 

 

■オーダーメイドにつくる精度を高めた金型

 

お客様から依頼を受けてからの仕事の流れは、まずはお客様が用意した部品の図面に基づいて、金型設計をおこないます。お客様の要望のヒアリングや、技術的な打ち合わせは設計者の役目です。「その部品を生産するには、どのような金型をつくればいいのか」と考えながら設計を進めていきます。

 

その後は設計図面をもとに、工作機械を使って鉄から金型を削り出します。加工した金型を組み上げた後、実際に部品を生産してみる試作成形を社内でおこない、きちんと意図した部品がつくれるかを確認し、完成した金型をお客様に納品します。

 

 

「当社の金型は一品一様のものです。金型設計はCAD技術の向上によって設計作業が効率化されていますので、それ以上に、お客様との打ち合わせや仕様の決定に、多くの時間を費やします。」と熊谷さん。

 

これまでも、これからも、同じ仕事はひとつとしてありません。試行錯誤を重ねることも多く、一つの金型を作るのに通常1.5ヶ月から2ヶ月ほどの時間を要します。金型の精度は100分の1ミリ単位が求められる世界。削り出した金型は、最終的に人が金型を磨いて微調整することで、高い品質を実現させています。金型の素材となる鉄は温度によって伸びたり縮んだりしてしまうため、金型をつくる工場は24時間の温度管理がされています。

 

 

■変形を予測した金型設計

 

有限会社アイテックの主力製品は“インサート成形”用の金型です。インサート成形とは、プラスチックとほかの素材を一体化させる成形方法です。金型に金属部品やガラスなどの異素材を挿入して樹脂を流し込み、一体化させます。プラス・マイナスドライバーをイメージするとわかりやすいかもしれません。諏訪圏は、鉄製部品を製造するプレス加工業者が多い地域として知られていますが、近年は新たにインサート成形に取り組むケースが増えていてご依頼を受けています。

 

「インサート成形の金型製造には、高度なノウハウと経験が求められます。作成した金型部品を、金型にセットした状態で高温の樹脂を流し込む工程の際、“金型部品が樹脂にどのような変形を生じさせるか?”をあらかじめ予測しながら設計をおこなう必要があるからです。」と熊谷さん。

 

金型の精度だけでなく、部品の変形や、樹脂の流れを見越した複合的な判断が求められる付加価値の高い仕事です。長年の経験をもとに、試行錯誤を重ねて、お客様の多様なニーズに応えています。

 

 

金型製造において最も難しいのは、お客様の工場に設置した後のご要望に応えることです。金型は約2か月かけてつくられて、お客様のもとに納品されていますが、その後も量産に至るまで、何度も修理と調整を重ねて、完成度を高めていきます。

 

「サンプルを作成し、それをお客様が評価します。お客様からの『こうしたい』『この不具合を直してほしい』などの要望が出れば、それを一つひとつクリアしていきます。」と熊谷さん。

 

プラスチックの特性上、冷却する過程の変形や収縮が問題になる場合があるため、変形を予測して金型を設計するノウハウが必要です。納品後に改めて調整を繰り返していくことがあります。

 

 

■自信のアフターフォロー

 

有限会社アイテックの強みは、お客様の求められる精度や工期に応えること。そして、工場やメーカーに納品したあとの、アフターフォローにあります。

 

アフターフォローとは、例えば、お客様の量産工程で発生するトラブルへの対処です。量産工程でトラブルが発生した際には、メーカーや量産工場からの報告を受けて、原因の究明や資料の提供、修理対応などを迅速に進めていきます。

 

「当社は金型をつくる企業のなかでも、アフターフォローの面で優れていると自負しています。納品して終わりではなく、その後もお客様や量産工場が困ったときに頼れる存在であり続けることが当社の強みです。自動車分野では金型が20年以上使われるケースもあり、中長期的なサポートを通じて信頼関係を構築しています。」と熊谷さん。

 

有限会社アイテックでは「お客様を困らせない」という理念を掲げていて、この思いがアフターフォローへの姿勢に直結しています。

 

 

 

■品質向上と成型メーカとの提携による量産体制構築を目指して

 

今後の展望は、スピードやコストとのバランスを取りながら、品質の向上を目指すこと。時間やコストを無制限にかければ品質の良いものがつくれる一方で、それではお客様の要望や条件を満たせないことがあります。

 

「メーカーのお客様は、生産のスタート時期やコストを厳密に定めているので、その条件に対応しながら、お客様に満足していただける金型を提供することが当社の使命だと考えています。」

 

そして、現在は金型製造に特化していますが、今後は量産工場との業務提携を通じて、金型製造から量産まで一貫して提供できる新たな体制を構築していきます。

 

「メーカーのお客様にも、広いサービスをご提供していきます。当社は、お客様の課題解決に力を入れることで信頼関係を築きあげてきましたが、これまでに多くのリピーターに支えられてきました。今後も、お客様との信頼関係を軸にして、新しい事業領域への展開を目指します。」

 

 

 

■各分野のプロフェッショナルが、生産工程をつなぐ

 

社員の方にもお話を伺いました。入社19年目の北原竜也さんの役割は“金型設計から完成までの加工工程の決定”と“マシニングセンターという金型を切削する機械を動かすためのオペレーター”です。特に、金型の加工方法を考えて手順を決定し、それに沿って社員全員が各工程を担当する仕組みを構築しているので、完成までの道筋を描く重要なポジションにあります。

 

作業中に気をつけていることは、後の作業も考えながら、加工の順番や工程を決定することです。加工工程が適切でないと、あとの作業に支障が出たりしてしまいます。そのため、頭の中で製品が完成するまでの手順をしっかりと組み立てながら作業を進めることが大切です。

 

「仕事のやりがいを感じるのは、パソコン上で作成したデータから、実際の金型として仕上がったとき。そして、その仕上がった金型から、ご依頼のあった部品が出来上がった瞬間も、達成感がありますね。」と北原さん。

 

また、仕事の特性上、同じ仕事はほぼなく、毎回新しい課題に直面する点が難しさでありつつも、やりがいでもあるそうです。金型の形状は案件ごとに異なります。

 

「なかには複雑で難易度の高いものもありますが、これまでの経験が助けになります。過去の案件で『少し似ているな』と感じるものを思い出して、記憶を頼りに対応方法を生み出すこともあります。今後の目標は、“素早く、精度よく”を実現させていくことです。」と北原さんは話します。

 

 

次にお話を伺ったのは入社9年目の翁 基貴さん。以前はIT関係の仕事に就いていて、ものづくりの現場は未経験でしたが、こちらにきて工作機械に触れながら仕事を覚えました。

 

主な仕事は“金型を構成する部品の加工”です。CAD/CAMソフトを使用してプログラムデータを作成し、それを機械に送信して大きな鉄板から部品の輪郭を切り出す加工をおこないます。

 

「仕事で特に難しいと感じるのは、部品加工の順番を効率よく組み立てることです。機械が動いていない時間を減らし、無駄なく作業を進めるために、数日先のスケジュールまで頭の中でイメージしながら進めます。しっかりとした計画を立てるためには、作業全体を見通す力が必要です。」と翁さんは話します。

 

仕事のやりがいを感じるのは、調整依頼を受けた際に、その要求に応えることができたとき。例えば、お客様から『ここをもう少し調整してほしい』という要望があった場合、長年の経験を活かしてピタリと寸法を合わせることができるようになったことといいます。

 

「現場での日々の作業を通じて、新しい経験を積み重ねていける点も魅力のひとつです。そして社内で試作した部品をもとに、迅速に改善できる仕組みが整っていることもやりがいに通じていると感じています。」と翁さん。最近では、自身のなかで『こういう状況ではこう対処すれば良い』という考えが整理されてきていて、業務に活かせるようになったことにも手応えを感じています。

 

今後は現場での経験を活かして、設計の部署に異動となります。設計は、最初の工程であり、製品の完成度を左右する重要な役割を担っています。早く確実に設計のスキルを身につけて、一人前の設計者となることを目指していきます。

 

「顧客との打ち合わせを通じて、ご依頼を正確に把握し、それを製品設計に反映することで、お客様にご満足いただけることを目指していきたい。」と翁さん。

 

完成までの各工程で、ひとりひとりが各分野のプロフェッショナルとして推進しています。「お客様を困らせない」という理念のもと、今後も成長を続けていきます。

 

 

 

 

  • 会社情報
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    事業者名有限会社 アイテック
    所在地〒399-0428 長野県上伊那郡辰野町大字伊那富8333-1
    電話番号0266-43-2915
    FAX0266-43-2916
    E-mailshiro_kumagai@itec-m.co.jp
    URLhttp://www.itec-m.co.jp
    設立年月日1993年2月
    資本金500万円
    代表者名代表取締役社長 熊谷 志郎
    全従業員数17名(うち、男性15人 女性2人)
    主な業種プラスチック用金型製造
    事業内容自動車向け等のプラスチック製品用金型の設計・製造
    会社PR

    少数精鋭による高生産性と高利益率を追求する企業を目指す。

会社情報
事業者名有限会社 アイテック
所在地〒399-0428 長野県上伊那郡辰野町大字伊那富8333-1
電話番号0266-43-2915
FAX0266-43-2916
E-mailshiro_kumagai@itec-m.co.jp
URLhttp://www.itec-m.co.jp
設立年月日1993年2月
資本金500万円
代表者名代表取締役社長 熊谷 志郎
全従業員数17名(うち、男性15人 女性2人)
主な業種プラスチック用金型製造
事業内容自動車向け等のプラスチック製品用金型の設計・製造
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少数精鋭による高生産性と高利益率を追求する企業を目指す。

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