「金属×プラスチック」「DX×工場」が　　　　　　　　強みのグループ企業

プレス金型の設計製作や、プレス加工をおこなう「有限会社フジ精密工業」。2020年には省力化機器の開発・製作をおこなう「株式会社宮坂製作所」、そして2021年にはプラスチック部品製造業の「飯田モールド株式会社」とグループ企業となりました。

「今後は『フジ精密工業グループ』として、会社間の得意を掛け合わせて相乗効果を図ります。」と語るのは代表取締役の藤崎聖さん。異素材の生産工場が合わさった「金属×プラスチック」の生産や、省力化機器を用いることで生まれる「DX×工場」の可能性を伺いました。

■ それぞれの分野を活かしたグループ企業へ

「有限会社フジ精密工業」「株式会社宮坂製作所」「飯田モールド株式会社」がグループ企業となりました。なぜグループ化を目指したのでしょうか？

〈藤崎社長〉
「日本には、中小企業はたくさんありますが、それぞれ専門分野が細分化されています。例えば、グループの中心となる『有限会社フジ精密工業』では、金型製作とプレス加工が専門です。実は、そのほかの事業経験がなかった状態に、とても危機感がありました。

『当社に足りないものを補い、そして時代に沿って、ほかにはない付加価値をご提供していきたい』との思いから、グループ企業を目指しました。」

グループの中心となるのは「有限会社フジ精密工業」。技術や、生産品について教えてください。

〈藤崎社長〉
「『有限会社フジ精密工業』は、昭和47年に創業しました。オリジナルの金型設計・製作から、プレス加工や板金加工まで一貫しておこないます。

板の状態から金型を使い『抜き加工』『曲げ加工』『絞り加工』を行います。ばね性が強いために精度を出すのが難しい『ステンレス板バネ』などの難しい加工依頼もありますね。

自動車部品、産業機器部部品をメインに医療機器などの部品を担当。およそ600種類以上の品種を、100〜100,000個生産しています。」

グループ企業2社の事業について教えてください。

〈藤崎社長〉
「まず2020年にグループ化された『株式会社宮坂製作所』は、『省力化のための自動機』を扱う企業です。工場の省力化自動機の開発、設計、製作、販売、そしてお客様の工場においての組み立てや、動作確認までを担当します。当社の生産技術部門かつ開発部門でもありますね。

グループ化当初から、それぞれメカ設計と制御経験のある2名の社員に『権限はすべて渡すから、好きなようにやってほしい』と、会社をまるっと任せました。私に相談しなくても、必要なものを自由に購入できる、そして自由な開発ができる環境にしたところ、グループ化２年目で黒字化が実現しました。

今後も、生産に欠かせない省力化機器を、お客様のご要望に合わせてオーダーメイドで作らせていただきます。」

社員に権限委譲しているとのことですが、その環境が自由な発想を可能とするのでしょうか？

〈藤崎社長〉
「いろんな判断をする際に承認が要らないので、動きは早くなりますね。
そして製造業は失敗してなんぼ。失敗しないと技術を蓄えられません。失敗して分かったことから、また新しい技術が生まれることが多々あるので、失敗を恐れずに自由な開発をしてもらえるように整えています。」

2021年にグループ化された「飯田モールド株式会社」についてはいかがでしょうか。

〈藤崎社長〉
「『飯田モールド株式会社』は『プラスチック射出成形』ができる企業です。加工において、フジ精密工業は金属、飯田モールドはプラスチックを専門としていますので、今後は金属とプラスチック両方の素材に、グループでご対応できるようになりました。

製造業では、コストの安さを求めて、内臓の部品が金属からプラスチック製に移ることが多々あります。逆に、強度を上げるためにプラスチック製から金属製に移ることもあります。

これまでは、フジ精密工業で生産していた金属部品が、例えば、モデルチェンジによってプラスチック製品に切り替えられることがあれば、どうしてもお客様が離れてしまっていました。今後は、飯田モールドにてご対応できますね。

さらに、金属部品とプラスチックの部品が一体となった『インサート成形品』もできるようになりました。『インサート成形品』とは、プラスチックの中に金属が埋まっている部品。身の回りで想像できるものでは、ドライバーが当てはまりますね。

今後は、その技術を応用した、電子部品の生産も承ります。金属部分を外気に触れないように隙間なくプラスチックで包むことで、衝撃や熱、ホコリなどから部品を守るうえに、小型化、薄型化、軽量化が期待できます。」

■ グループ化の相乗効果。専門をつなげるDXが強み

宮坂製作所が持つ省力化のノウハウと、フジ精密工業と飯田モールドが持つ生産現場の相乗効果について教えてください。

〈藤崎社長〉
「省力化できる自動機を生産工場に設置することによって、人材不足対策や効率化につながりますね。開発現場と生産現場が近いので、社内で実際に使って改良できるのも強みです。それぞれの専門分野の声が集まることで、質の高い自動機が生まれていきます。

現在、ロボットアームによって部品を１つずつ掴み、検査カメラの前に置いて不良を検出する『検査自動機』が完成間近です。宮坂製作所のロボットは、部品が箱に無造作に入った状態でも、１つずつ掴むことができます。

ほかにも『自動分析システム』開発に取り組んでいます。これまでは、数値データをとって分析する際は、人が数値データを入力する必要がありましたが、今後は自動で入力・分析まで行えます。」

それぞれの専門分野が協力して進んでいくのですね。

〈藤崎社長〉
「今後の技術業界では、分業は難しいと考えています。メカ設計や制御、ソフトウェアなど、それぞれのエンジニアがつながれば、DX（デジタルトランスフォーメーション）へとつながります。これまで当社はハードウェアに偏っていましたが、ソフトウェアとバランスよく両立できれば、事業の可能性が広がると思っています。

地方では人材不足から生まれる課題もたくさんあります。自動機は人材不足を補える存在。安定して高品質の部品をご提供していくために、今後ますます必要となると考えられます。」

■ ものづくりは、自由な発想で生まれるもの

グループ全体で、浸透している理念はありますか？

〈藤崎社長〉
「『自由な発想を大切にすること』です。『新しい価値をつくるために、どのようにグループを連携していくべきか』『どのような省力化・自動化が実現できるのか』などを発想し、新しい取り組みが生まれてほしいと考えています。

中小企業ではスタッフ一人が担う範囲が広いもの。もしやりたいことがあっても、それを実現する環境を、自分で整えていかなくてはなりません。自由な発想が生まれないような、ガチガチにルールが決められた環境では、それは叶えられないでしょう。」

今後、目指す事業展開について教えてください。

〈藤崎社長〉
「今後は『部品の総合メーカー』として貢献できるように考えています。例えば、ひとつの部品ではなく、それらが組み合わさったユニットをご提供するための役割ですね。

お客様からいただいた設計図をもとにして、当社は協力工場の振り分けから、ユニット組み立てまでおこない、製品を具現化します。もちろん、その過程において必要な金型や省力自動機の開発・生産も可能です。

フジ精密工業グループ全体で、新しい付加価値をこの世に生み出していきたいと考えています。」