体験者の声
夫婦が「移住後クライシス」を乗り切るには?「みなものふたり」が辰野町で対話サービスを実証実験して見えてきたこと【Airbnb×WORK TRIP】
2021年10月から2022年2月にかけて、Airbnb Japanのご支援のもと、暮らすように地域を旅しながら、共創プロジェクトを生み出す約半年間の共創型ワーケーションプログラムが辰野町で行われました。
それぞれ異なる4つの団体が参加したこのプログラム。
その第1弾としてご紹介したいのが、対話によってより良い夫婦関係やパートナーシップを築く支援をする「みなものふたり」です。
なぜ辰野町だったのか、辰野町でどんなプロトタイプを実証実験したのか、その結果どんな成果が得られたのか、また辰野町をワーケーションしてみて感じた率直な感想を寄稿いただきました。
対話でパートナーシップをより良くする「みなものふたり」
「みなものふたり」は、ふたりらしい幸せを自ら探究していきたい方の「家族の土台作り」をサポートしています。
もともと他人同士のふたりが家族を築く過程では、ちょっとした「?」がつきもの。「なんでこうしたんだろう?」「なんでこんな言い方したんだろう?」「こんなこと言ったら嫌かな?」そんな、相手を思いやるからこその自己完結が当たり前になると、いつの日か無意識に我慢したり無理する関係になってしまいます。
お互いが自分らしくいられる関係を探究したい。もし将来子どもを育てることになった時も、自分たちがそうあることで子どもに自分らしく居てほしい。そんな想いを持つ方が、これから家族を作っていく過程を、みなものふたりでガイドしています。
詳しい紹介はサービスイメージ動画を覗いてみてください!
訪れるうちに辰野町が「帰れる場所」に
2020年夏、みなものふたりを創業する前にヒアリングの協力者を募集していたときに出会ったのが辰野町でした。地域おこし協力隊の方が辰野町にいるお母さん方を繋げてくれ、その方々とお話するうちに辰野町に訪れることに。それをきっかけに1年で3回ほど訪問させていただくほど「帰れる」場所という感覚になっていました。
移住する前にこそ求められるパートナー間の対話
ユーザーさんからの、転居する前に価値観の擦り合わせたい、という声。
これまで”みなものふたり”では、50組以上のカップル・夫婦と対話させていただく過程で「移住前の理想の暮らしを描きたい」という話をいただくことがありました。カップル・夫婦にとって、出産・転職・転居はどこかで体験する転機。「決断する過程で価値観の擦り合わせをしっかりして、変化の後はより幸せでいたい」そんな想いからのご要望でした。
そんな縁深い辰野町で本事業が行われることを知り、「地域暮らし」という軸でみなものふたりが役に立てるか実証実験がしたい、と想い応募しました。
みなものふたりが取り組んだ共創型ワーケーションは?
夫婦の「移住後クライシス」問題を解決する対話サービスの可能性について実証実験を行いました。
そのために具体的に取り組んだことは以下3つです。
①夫婦で辰野と東京を2拠点生活
私たち夫婦が実際に2拠点居住にチャレンジすることで、2拠点居住をする夫婦に対してどんなサポートが必要かの仮説立てる
②みなものふたり移住後支援verのモニター実施
メンバー全員で辰野町を訪れ、移住前後の方をモニターとしてセッションを実施させていただく
③みなものふたり合宿
メンバーみんなで事業の見直しと、今後の計画策定のための合宿を実施
地域移住に関わる方に事前にヒアリングを行い、夫婦の移住への温度感(目的意識)が擦り合わないまま移住して、移住後苦戦する事例(移住後クライシス)について知りました。移住というのはあくまで手段で、その先の暮らしが豊かになることを目的としているはずですが、意外と「暮らしのビジョン」をふたりで描く機会がないことが多いそうです。そこで、「移住前後に夫婦の価値観の擦り合わせをお手伝いできれば、幸せな暮らし・定住をサポートできるのではないか」という仮説で、実証実験を行いました。
実験の概要
・みなものふたりで「暮らしのビジョンを描く」を目的とした90分×2回の対話パッケージを用意
・モニターとして協力してくださる夫婦を3組みつけ、2か月に渡り実施
・モニター協力者は以下3組(辰野町在住者、辰野町との2拠点居住者)
1)移住前(2拠点中)の夫婦
2)移住後半年の夫婦
3)移住後3年の夫婦
・以下のように、毎回の対話セッション(90分オンラインで夫婦の対話をファシリテート)ごとにグラフィックレコーディングで対話の内容を可視化
実証実験後は、ユーザーさんとの体験振り返りを実施したり(下図)
地域の方と今後みなものふたりがお役立ちできることについてディスカッションをしたり(下図)
いただいたご感想・ご意見を踏まえ、実証実験を踏まえどうサービス発展させられるかを考える合宿をしたり(下図)
このように、辰野町にいらっしゃる方にあたたかく支援いただき進めていきました。
辰野町と東京の2拠点で活動した感想・気づき
- 少しの「手間」が、暮らしを楽しめるポイントに気づかせてくれる
例/ゆいまーるさんにある薪ストーブの面倒を見ようとすると、1時間ごとに仕事を中断して薪をくべなければいけないが、そのひと手間のおかげでリラックスでき、仕事をより効率化できることに気づきました。
- 「何もない」から創作欲が生まれる
例/町にノイズ(音・匂い・人)が少ないからこそ、考えに集中でき創作意欲が圧倒的に湧いてきました。生み出すには辰野町、推進するには東京、と2拠点あることで自分を使い分けすることができたと思っています。
実際に辰野で取り組んでみてよかったこと、成果、感想
モニタープラン体験者の声
- NPS平均:9.0
- 体験後のご感想
「ふたりだけで話すと、夫が”話すこと”妻が”聴くこと”を諦めてしまう。夫は『まあいいか』と飲み込んでしまい、妻は『また否定される』と思って聞くことを辞めようとする。ただファシリテーターがいると、『最後まで話す』、『最後まで聞く』ことができるようになり、自分の中にある勘違いに気づけた」
「普段は抽象的な話ばかりだったが、問いをもらうことで理想が具体になった」
「ふたりだけだと、辰野町の話、社会の話になっていたのが、自分たちの暮らしの話をする機会がそもそもなかったので新鮮な体験になった」
「辰野町に関わることが自分たちにとってどんな意味があるのか、自分たちは何を求めているのかが言語化され2拠点生活の継続によりリアリティが増した。なので今後は実現するための現実的な話(お金など)をしていきたいと思った」
「移住するとめちゃくちゃ忙しくなるので、こうやって立ち止まってふたりの暮らしについて話す機会がなかった。中長期的なふたりの理想についてこうやって話す機会は全員必要だと思う。暮らしに意思を持てる。自分たちも継続したいが、移住した人に対してプレゼントしたい」
みなものふたりメンバーの感想
自分たちの暮らしや幸せを「意思をもって選ぶ」お手伝いができました。
その過程にファシリテーターが存在することで、表面的な議論ではなく、考えの背景や気持ちを互いに伝えきることができ、暮らしに対する納得度を高められたと思います。
また、副次的な効果としては今回、みなものふたりメンバー計10名と辰野町で活動したが「また戻ってきたい場所ができた」と辰野町とのご縁ができました。今回訪れられなかったメンバーもまた連れて活動を続けていきたいです。
辰野町でチャレンジしたいこと
引き続き辰野町のみなさまと関わらせていただきながら、以下のようなみなものふたりとして新しいパッケージ・サービスを開発していきたいと思っています。全て構想段階であるので、地域の方とゆっくり対話を重ねながら最適なかたちに変容していきたいです。
1)移住者の先輩から、移住後輩への「移住応援ギフト」の企画
移住直前から移住後半年間を支援する、ギフトパッケージを検討したい。移住者の先輩から、これから移住を控える移住の後輩にギフトを送れるように設計する。パッケージは、「地域コミュニティへの参加・実践」 × 「対話セッションでの内省」がセットになったものを想定。モニターセッションを通して、移住においては対話だけでなく、地域参画という実践を織り交ぜることが重要であると考えたのが背景。変化の多い移住前~移住直後に定期的な実践×内省を繰り返すことで、自分たちらしい辰野町での暮らしの選択を支援したい。移住前後のふたり・家族の変化がグラフィックレコーディングに記録されていくので、地域の方や将来の子どもに体験を残せるのもポイント。
2)Airbnbホストさんと協働し「婚前ブートキャンプ」を企画
移住の希望有無に関わらず、これから結婚する首都圏在住のカップルを対象にした3泊4日のブートキャンプを辰野町のairbnbのお宿で実施したい。複数のカップルが集まり、普段馴染みのない辰野町という土地や、普段馴染みのない地域の方、初めての地域体験を行い、対話セッションを通して内省を行う想定。「未知のこと」に触れることで、より濃密な価値観の発見が可能になると考えている。新しい自分・新しいふたりに出会い直し、ふたりらしいビジョンを作る、短期集中型のキャンプ。
いかがでしたでしょうか?
みなものふたりのように、地域をフィールドに実証実験してみませんか?
相談はお気軽に。お待ちしています!
執筆:みなものふたりの皆さん(神原沙耶さん) 編集:北埜航太